カマ

母は七人兄弟の末っ子であるが
生まれなかった長女 が いたらしい
いまは出生率1.5人とからしいが
自分らの親世代はこのように姉妹兄弟が多いのが当たり前でもあった
戦争があったから、新しい生命に対する切実さのようなものは 現代の比ではないかもしれない

自分の母方の実家は鳥取県中部の温泉町三朝であり
本家はまあその温泉街から何KMか奥まったところにある山間の平屋の一軒やである
二十世紀梨を育てており、母の父(おじいちゃん)は組合長のようなこともしていたのではないか
自分からみれば、無口でたまに喋れば怒りっぽい頑固な 打ち解けにくい人であった

自分と母と弟が泊まりに行くときは
仏壇の間で蚊帳をつけてもらい寝た
眠るまで知らないおじさんやおばさんの遺影を見つめた

縁側の砂場にはアリクイがおって掘り出したりしてたな
アリクイはウスバカゲロウの幼虫である
離れにあるトイレは汲み取り式で便器の底にはブラックホールがどこまでも広がっており
絶対にここに落ちてはいけないと思った
落ちたら死ぬ
あの頃は そこに行けば死ぬ、というような場所がいまより町にあったな

夏がはじまるまえに
親せきのおじさんが一人
山中でカマを使って死んだそうである
もともと変わり者であったという
自分はよく絵を描く子であったので
おばあちゃんが用意してくれたチラシの裏に絵を描きながら
大人がカマで死ぬことの不思議に想いをめぐらせた。











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