ナイフ

十七の頃、自分は
新宿駅構内で銃刀法違反で捕まったことがある
いま、思えば捕まりたかったのではないかと思う
都会で 一人で 飢えており 疲れていた
パトカーのなかで「そんなかわいい声してるけど喧嘩したことあるのか?」などと言われムッとしたりした
パンクロックのボーカルを務めるにあたって自分のボーイソプラノに若干の劣等感を持っていた
手錠を布のようなもので隠し
護送車に乗り込む
護送車の中には犯人がたくさんいたので
ドラマみたいだなと思った
田舎の母に電話した時にはさすがにもらい泣きしてしまったが
当時の自分は、何をどう更生し周囲に迷惑をかけず なおかつ自分の人生を生きるのかまったく指針が掴めなかった
留置場で相部屋の幾つか年上の男は傷害で捕まったと言っていた
薬とか万引きとかセコい奴らばっかだよ、と彼は言った
留置場ではぼぼ三日寝転んで 小山ゆうの「がんばれ元気」を読んでいた
二十冊くらいあるなかから選んで、貸してもらえるのである
次の日になると障害の男も「がんばれ元気」を読みはじめていた
二人で並んで寝転がり「がんばれ元気」を読んでいた
鉄格子の向こうから外界の光がレーザーのように指し
そこに浮かび上がる埃がきらきらとしていた






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